教育課程審議会答申

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1997(平成9)年 「教育課程の基準の改善の基本方向について(中間まとめ)」

 まず、学校は子どもたちにとって伸び伸びと過ごせる楽しい場でなければならない。子どもたちが自分の興味・関心のあることにじっくり取り組めるゆとりがなければならない。また、分かりやすい授業が展開され、分からないことが自然に分からないと言え、学習につまずいたり、試行錯誤したりすることが当然のこととして受け入れられる学校でなければならない。さらに、そのためには、その基盤として、子どもたちの好ましい人間関係や子どもたちと教師との信頼関係が確立し、学級の雰囲気も温かく、子どもたちが安心して、自分の力を発揮できる場でなければならない。

1998(平成10)年6月 「審議のまとめ」

<教育課程の基準の改善のねらい>
 以上のような基本的考え方に立って我々は教育課程の基準の改善について検討を行った。教育課程の基準の改善のねらいとして挙げられるべき事柄は種々あったが、本審議会としては、まず、幼児児童生徒の現状や国際化の進展等を踏まえ、これからの時代を担う幼児児童生徒を育成する学校教育においては、時代を超えて変わらない調和のとれた人間形成が特に重要であると考え、豊かな人間性社会性、国際社会に生きる日本人としての自覚を育成することを改善のねらいの第一に掲げた。
 また、これからの激しい変化が予想される社会を生きていく幼児児童生徒の教育の在り方を考えるとき、多くの知識の習得に偏りがちであったこれまでの学校教育の基調を転換し、自ら学び自ら考える力を育成することも重要であると考え、これをねらいの第二に掲げた。
 そして、これらのねらいを実現するためには、その基盤として、各学校がゆとりのある教育活動を展開する中で一人一人の幼児児童生徒に基礎・基本の確実な定着を図り、個性を生かす教育を充実することが重要であると考え、これを第三に掲げた。
 また、これらのねらいを実現するためには、何よりも地域や学校、幼児児童生徒の実態を踏まえ、各学校が創意工夫を発揮して、特色のある教育活動を展開することが不可欠であると考え、これを第四として掲げた。
 以上のような4点を我々は、教育課程の基準の改善のねらいとして掲げることとした。
 それぞれの具体的内容は次のとおりである。

1.豊かな人間性社会性国際社会に生きる日本人としての自覚を育成すること。
2.自ら学び、自ら考える力を育成すること。
3.ゆとりのある教育活動を展開する中で、基礎・基本の確実な定着を図り、個性を生かす教育を充実すること。
4.各学校が創意工夫を生かし特色ある教育、特色ある学校づくりを進めること。

<総合的な学習の時間>
ア 「総合的な学習の時間」の創設の趣旨
 「総合的な学習の時間」を創設する趣旨は、各学校が地域や学校の実態等に応じて創意工夫を生かして特色ある教育活動を展開できるような時間を確保することである。また、自ら学び自ら考える力などの[生きる力]は全人的な力であることを踏まえ、国際化や情報化をはじめ社会の変化に主体的に対応できる資質や能力を育成するために教科等の枠を越えた横断的総合的な学習をより円滑に実施するための時間を確保することである。
 我々は、この時間が、自ら学び自ら考える力などの[生きる力]をはぐくむことを目指す今回の教育課程の基準の改善の趣旨を実現する極めて重要な役割を担うものと考えている。
イ 「総合的な学習の時間」のねらいや学習活動等について
 (ア)「総合的な学習の時間」のねらいは、各学校の創意工夫を生かした横断的総合的な学習や児童生徒の興味関心等に基づく学習などを通じて、自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てることである。また、情報の集め方、調べ方、まとめ方、報告や発表・討論の仕方などの学び方やものの考え方を身に付けること、問題の解決や探究活動に主体的創造的に取り組む態度を育成すること、自己の生き方についての自覚を深めることも大きなねらいの一つとしてあげられよう。これらを通じて、各教科等それぞれで身に付けられた知識や技能などが相互に関連付けられ、深められ児童生徒の中で総合的に働くようになるものと考える。
 (イ)「総合的な学習の時間」の教育課程上の位置付けは、各学校において創意工夫を生かした学習活動であること、この時間の学習活動が各教科等にまたがるものであること等から考えて、国が目標、内容等を示す各教科等と同様なものとして位置付けることは適当でないと考える。このため、国が、その基準を示すに当たっては、この時間のねらい、この時間を各学校における教育課程上必置とすることを定めるとともに、それに充てる授業時数などを示すにとどめることとし、各教科等のように内容を規定することはしないことが望ましいと考える。
 高等学校については、生徒の学習成果がこの時間のねらいからみて満足できると認められるものについては単位を与え、この単位は卒業に必要な修得単位数に含めることが適当である。
 「総合的な学習の時間」のこのような特質にかんがみ、教育課程の基準上の名称については「総合的な学習の時間」とすることとし、各学校における教育課程上の具体的な名称については各学校において定めるようにすることが妥当であると考える。
 (ウ)「総合的な学習の時間」の学習活動は、(ア)に示すねらいを踏まえ、地域や学校の実態に応じ、各学校が創意工夫を十分発揮して展開するものであり、具体的な学習活動としては、例えば国際理解、情報、環境、福祉・健康などの横断的総合的な課題、地域や学校の特色に応じた課題などについて、適宜学習課題や活動を設定して展開するようにすることが考えられる。その際、自然体験やボランティアなどの社会体験、観察・実験、見学や調査、発表や討論、ものづくりや生産活動など体験的な学習、問題解決的な学習が積極的に展開されることが望まれる。


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