中央教育審議会答申

空欄補充演習


1981(昭和56)年6月 「生涯教育について」

 人間が生涯を通じて資質能力を伸ばし、主体的な成長・発達を続けていく上で、教育は重要な役割を担っている。今日、人々が自己の充実生活の向上のため、その自発的意思に基づき、必要に応じ自己に適した手段・方法を自ら選んで行う学習が生涯学習であり、この生涯学習のために社会の様々な教育機能を相互の関連性を考慮しつつ総合的に整備・拡充しようとするのが生涯教育の考え方である。
 このような生涯教育が重視されるようになった背景としては、科学技術の進歩や国際関係の緊密化などの社会・経済の急速な変化に伴う適切な対応の必要性、人々の教育的文化的要求そのものの増大、所得水準の向上や労働時間の短縮、あるいは寿命の延長などによる人々の経済的・時間的ゆとりの増加、自由な活力ある社会を築いていく上での適切な教育的対応の必要性などが挙げられる。

1989(平成元)年10月31日 生涯学習に関する小委員会の審議経過報告

 生涯学習が盛んに行われている背景としては、所得水準の向上、自由時間の増大、高齢化の進行等に伴い、学習自体に生きがいを見いだす人びとの学習意欲が高まっているとともに、科学技術の高度化や情報化国際化の進展により、絶えず新たな知識技術を習得する必要が生じていることが挙げられよう。
 また、わが国においては学校教育への過度の依存に伴う学歴偏重の弊害が生じており、今後はこれを是正して、人びとか生涯にわたって学習し、それを正当に評価する社会を築いていくことが重要と考えられる。

1996(平成8)年7月 「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について(第1次答申)」

 このように考えるとき、我々はこれからの子供たちに必要となるのは、いかに社会が変化しようと、自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力であり、また、自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心など、豊かな人間性であると考えた。たくましく生きるための健康体力が不可欠であることは言うまでもない。我々は、こうした資質や能力を、変化の激しいこれからの社会を[生きる力]と称することとし、これらをバランスよくはぐくんでいくことが重要であると考えた。
 [生きる力]は、全人的な力であり、幅広く様々な観点から敷衍することができる。
 まず[生きる力]は、これからの変化の激しい社会において、いかなる場面でも他人と協調しつつ自律的に社会生活を送っていくために必要となる、人間としての実践的な力である。それは、紙の上での知識だけでなく、生きていくための「知恵」とも言うべきものであり、我々の文化や社会についての知識を基礎にしつつ、社会生活において実際に生かされるものでなければならない。
 [生きる力]は、単に過去の知識を記憶しているということではなく、初めて遭遇するような場面でも、自分の課題を見つけ、自ら考え自ら問題を解決していく資質や能力である。これからの情報化の進展に伴ってますます必要になる、あふれる情報の中から、自分に本当に必要な情報を選択し、主体的に自らの考えを築き上げていく力などは、この[生きる力]の重要な要素である。
 また、[生きる力]は、理性的な判断力や合理的な精神だけでなく、美しいものや自然に感動する心といった柔らかな感性を含むものである。さらに、よい行いに感銘し、間違った行いを憎むといった正義感公正さを重んじる心、生命を大切にし、人権を尊重する心などの基本的な倫理観や、他人を思いやる心の優しさ、相手の立場になって考えたり、共感することのできる温かい心、ボランティアなど社会貢献の精神も、[生きる力]を形作る大切な柱である。
 そして、健康体力は、こうした資質や能力などを支える基盤として不可欠である。
 このような[生きる力]を育てていくことが、これからの教育の在り方の基本的な方向とならなければならない。[生きる力]をはぐくむということは、社会の変化に適切に対応することが求められるとともに、自己実現のための学習ニーズが増大していく。いわゆる生涯学習社会において、特に重要な課題であるということができよう。
 また、教育は、子どもたちの[自分さがしの旅]を扶ける営みとも言える。教育において一人一人の個性をかけがえのないものとして尊重し、その伸張を図ることの重要性はこれまでも強調されてきたことであるが、今後の[生きる力]をはぐくんでいくためにも、こうした個性尊重の考え方は、一層推し進めていかなければならない。そして、その子ならではの個性的な資質を見いだし、創造性等を積極的に伸ばしていく必要がある。こうした個性尊重の考え方に内在する自立心自己抑制力自己責任自助の精神、さらには、他社との共生、異質なものへの寛容、社会との調和といった理念は、一層重要視されなければならない。
 今後、国際化がますます進展し、国際的な相互依存関係が一層深まっていく中で、子どもたちにしっかりと[生きる力]をはぐくむためには、世界から信頼される、「国際社会に生きる日本人」を育てるということや、過去から連綿として受け継がれてきたわが国の文化や伝統を尊重する態度を育成していくことが、これまでにも増して重要になってくると考えられる。

1997(平成9)年6月 「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について(第2次答申)」

 教育は、「自分探しの旅」を扶ける営みと言える。子どもたちは、教育を通じて、社会の中で生きていくための基礎基本を見に付けるとともに、個性を見出し、自らにふさわしい生き方を選択していく。子どもたちは、こうした一連の過程で、試行錯誤を経ながら様々な体験を積み重ね、自己実現を目指していくのである。それを的確に支援することが、教育の最も重要な使命である。このような教育本来の在り方からすれば、一人一人の個性をかけがえのないものとして尊重し、その伸張を図ることを、教育改革の基本的な考え方としていくべきである。

 戦後、我が国は、経済成長に邁進し、ものの豊かさを追求してきた。そして人々のたゆまぬ努力により、今日、物質的な繁栄は遂げられたが、その反面、人々は[ゆとり]を失い、必ずしも自己実現心の豊かさを実感するに至っていない。また、我が国社会においては、同質志向横並び意識、さらには過度に年齢にとらわれた価値観などが依然として根強く存しているものの、近年、人々は、多様な価値観に基づく自己実現心の豊かさを求めるようになってきている。今後の我が国は、個性が尊重され、自立した個人が自己責任の下に多様な選択を行うことができる、真に豊かな成熟した社会の創造を目指していくことが求められていくであろう。

1998(平成10)年6月30日 「新しい時代を拓く心を育てるために

 子どもたちが身に付けるべき「生きる力」の核となる豊かな人間性とは、
 i )美しいものや自然に感動する心などの柔らかな感性
 ii )正義感や公正さを重んじる心
 iii )生命を大切にし、人権を尊重する心などの基本的な倫理観
 iv )他人を思いやる心や社会貢献の精神
 v )自立心、自己抑制力、責任感
 vi )他者との共生や異質なものへの寛容
などの感性や心である。


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